ももふくクリニック

疾患について

精神疾患について

病気について知ることは一緒に治療をしていく上でとても大切なので、精神疾患についての簡単な説明を載せていきます。

 

しかし、実際に患者さんを診察していると、教科書通りの病状を示す人は少なく、個々の事情や環境などいろいろな要素が絡み合い、多彩な症状を呈していることが多いので、それぞれにあった診断と治療がとても大切です。ひとりで抱え込まずに、相談にお越しください。

 

 

 

統合失調症はどんな病気?

統合失調症は、幻聴(実在しない声がきこえる)や妄想(現実でない考えにとらわれる)などの幻覚・妄想や、怒りにもとづく攻撃的感情や猜疑心による被害的感情から興奮が抑えられなくなる精神運動興奮、そのほか混乱したまとまりのない思考、といった陽性症状と、意欲低下や感情の平板化といった陰性症状を主とする症候群です。

 

「症候群」というのは「疾患」とは少し違い、「これこれの症状が集まればこういう病名で呼びましょう」というひとつの約束事のようなものです。統合失調症を症候群としているのは、心筋梗塞やがん、糖尿病といった身体疾患とは異なり、病気の実態を脳や体の中に見定めることができないため、「疾患」として定義することが難しいためです。このことは、統合失調症に限らず、うつ病・躁うつ病や不安症、その他多くの精神科で扱う病気にも当てはまります。

 

統合失調症の症状は?

統合失調症は、眠れない、集中できない、周囲の様子や人がいつもと違うように漠然と感じる、なんだか周りが怖い、気持ちにゆとりがなくなる、といった一見病気とはわかりにくい脳と体の変化から始まることが多いといわれています。そこで休むことができず無理が続くと、幻覚・妄想、興奮などの急性期の症状が生じます。

 

多くは10代〜20代に発症しますが、中高年に発症することもあります。また症状が十分に改善せずに長期間続いたり、病状悪化を何度も繰り返したりすると、徐々に思考力や判断力、現実検討力などの認知機能の低下、それに基づく社会機能の低下が生じることがあります。

 

そのため、できるだけ発症早期に治療を開始するのがよいとされています。

 

統合失調症の治療は?

薬が有効なことが多いので、まずは心身の休養を十分にとりながら薬による治療を開始し、そして、その薬の治療を続けることが大切です。統合失調症の治療に使用される主な薬は「抗精神病薬」と呼ばれています。

 

薬の治療でいっときの苦しい症状が落ち着いても、病状によっては、先ほど述べた認知機能の低下や意欲・集中力の低下から、学校の勉強ができなくなる、仕事が続けられない、人と会ったり人と話したりすることが困難になる、といった状態になることがあります。そしてそのために日常生活や社会生活が送りにくくなることがあります。

 

そんなときには、薬の治療を継続することと並行して、デイケアや就労支援施設などの社会資源を利用できます。急性期の治療とは違って、ある程度長期的な取り組みとして、無理のない自分自身に合った日常生活・社会生活が送れるようリハビリテーションをしていくことが大切です。またさまざまな福祉サービスを利用することで経済的な負担を軽減することができ、それも気持ちの焦りをゆとりに変えていくのに役立ちます。

 

このように、複合的に療養環境を整えていくことで病状回復の土台を作り、本来もっている自己治癒力(回復力)を発揮しやすくすることが治療の要諦となります。

 

 

 

うつ病・躁うつ病ってどんな病気?

うつ病とは、気分の「落ち込み」を主とする病気です。躁うつ病はそれに加えて、「気分の高揚」も合わせもつ病気です。この二つの病態は両極端にみえますが、実はひとつの病像の別のあり様であるとも考えられています。

 

精神疾患で扱う「気分」ということばには、ある程度の「長期的な感情の状態」という含意があります。気象状況に例えると、「今日の天気」ではなく「この地域の気候」ぐらい、極端にいうとそれぐらい重しのきいた持続的なニュアンスがあります。そしてその気分の変化は原因なく生じることがその本質です。つまり、日々の天気は気圧の変化などの局所的な要因に影響されますが、気候は地球規模で形成されたより大きな気象の傾向を表すように、「気分」も、局所の小さな変化では影響を受けないぐらいの堅牢さがあります。

 

うつ病や躁うつ病の場合も、中核群や重症になってくると、それぐらいの持続性と深さが症状に現れます。

 

したがって、「今日会社で嫌なことがあったから気分が落ち込む」「嫌な人のことを考えると食欲がわかない」というように、明らかに日常の中で原因が見て取れて、しばらくしたら自然に回復し、また今まで自分が経験してきた気持ちの変化の範囲内にその感情が収まっているときは、病気と考えなくてもよいでしょう。

 

うつ病の症状は?

その一方で、思い当たる原因もなく気分がふさぎ、体も重だるく、食事や睡眠もとりにくくなり、それがある程度の長期間(数週間から数か月)続く場合はうつ病の可能性が出てきます。

 

うつ病の本態は「気が流れなくなること」と言われています。例えると、ダムの水位が下がりきったときも気力はでませんが、ダムの水位は十分なのに流入と流出がない場合、このときダムの流れは遮断され流動性がなくなります。これが本格的な「うつ病」の状態です。

 

流れがないのにダムの水が緊満している状態は、「いらいらしてやらないといけないのに(焦燥感)、体がついてこない(抑制)」という、うつ病の中核的な症状(精神運動抑制)に相当します。

 

何かのきっかけでダムが決壊すると今度は急激な流れに転じますが、それはつまり不安焦燥の高まりとなり、ひどいときは自殺行動につながる場合もあります。

 

躁状態の症状は?

躁状態の場合は、症状がひどくなるとアクセルのみ作動してブレーキが利かなくなるため、気分が上がって楽しいだけでなく自分自身の感情や行動のコントロールができなくなることがあります。

 

うつ病・躁うつ病の治療は?

うつ状態と躁状態でこれらの症状がみられる場合には、早めに医療機関を受診する必要があります。そして十分な休養と薬による治療を行うことで回復することが可能です。うつ病の治療で使用される薬は「抗うつ薬」、躁うつ病の治療薬は「気分安定薬」が基本になります。

 

うつ病や躁うつ病の場合も、統合失調症の治療のときと同じで、再び病状が悪化することを防ぐことが大切です。そのためにも、薬の継続や減量、中止には慎重になる必要があります。

神経発達症群とは?

知的障碍(しょうがい)や自閉症、注意欠如/多動症といった、幼少期に始まり、発達の過程での認知や行動における偏りが問題となる病態です。最近では発達障碍ということばを皆さんもよく耳にされると思いますが、それはこれらの病態をまとめて呼んでいるものです。これらは特徴が重なっている部分があり、互いに見分けがつきにくいことがあります。また一人の人の中に重複して現れることも多くあります。

 

ここでは神経発達症の主なものとして、自閉症(自閉スペクトラム症)と注意欠如/多動症について解説します。

 

自閉スペクトラム症 Autism spectrum disorder(ASD)

 

概念

1943年にカナーという人が初めて医学的に自閉症を報告しました。当初はことばの遅れを伴う重症例が中心でしたが、その後、知的発達に問題のない高機能自閉症や、自閉症ほどではないものの同様の特性をもつアスペルガー障碍といった概念が提唱され、最近はそれらを含んだ従来の自閉症よりも幅の広い概念である「自閉症スペクトラム(自閉スペクトラム症)」という呼び方をされるようになっています。

 

症状について

1979年に英国のウィングという人が研究を行い、自閉症の特徴を社会性とコミュニケーション、イマジネーションの3つの領域の問題に集約させ、「ウィングの三つ組」といわれる概念を提唱しました。

 

社会性については、通常、赤ん坊に呼びかけたり目を見つめて笑いかけると、赤ん坊もお母さんのほうを振り向き、視線を合わせて微笑み返しますが、自閉症の場合はこのとき視線が合いにくく、返す反応も少なく、あるいは全く応答がなかったりします。遊んでいるときにちらっと母親の方も見たりする「他者参照」も少なくなります。また自分の興味あるものを指して周りの人にも知らせることを「共同注意」と呼びますが、これも自閉症のこどもでは定型発達のこどもよりも遅れると言われています。
その他、変化を嫌って同じものを好む、特定のものを集めるといった「こだわり」を認め、母親や兄弟と遊ぶよりも物を並べるのが好きだったりして、数字や図形、物理的な自然現象や辞書的・数理的な事柄に興味をもつ子どもが多くなります。
自閉症の子どもが豊かな感情や思考をもっている場合でも、そこには対人志向性が伴わないため、誰かと感情や思いを共有することが希薄になります。

 

人にとって社会性の獲得や人間関係の確立に、言語は欠かせないものです。自閉スペクトラム症ではことばの遅れはあったりなかったりしますが、ことばの遅れがない場合でも、ことばをコミュニケーションの中でうまく使用することが困難となります。聞いたことばをそのまま繰り返すオウム返しや独り言が多くなり、比喩やたとえをうまく理解できずに字義通りにことばを解釈します。またことばそのものの扱いだけではなく、ことばの周辺にあること、すなわち会話のニュアンスをくみ取ること、より具体的にはことばのやり取りに伴う身振りや表情、イントネーションや文脈を適切に読み取ることが苦手になります。またそれらを直観でわかるのではなく学習により補完するときも、学習されたものゆえにやりとりはどこか不自然でちぐはぐなものになることが多くあります。

 

またイマジネーションの問題では、模倣をすることが乏しく、ごっこ遊びやふり遊びをすることが少ないことが知られています。その他、先のことを予測して予定を組み立てることが苦手となり、スムーズな日常行動が難しくなります。また自分を他者の立場に置いてものを考えることも難しいため他者に共感することができず、他者との情緒的なコミュニケーションが難しくなります。

 

小さな男の子が車の模型で遊ぶ場面を考えてみましょう。定型発達の場合、男の子は家でこのおもちゃの車を走らせ、その様子を母親に見てもらおうと思って母親の姿を探します。ここでこの男の子は、自らの興味を他者と共有しようとしています。母親がすごいねーと言って男の子に向かってほほ笑むと、本人も嬉々として遊びを続けます。ここでは双方向のコミュニケーションが成立しています。一方、自閉症のこどもの場合、一人で黙々とおもちゃの車を動かしています。車で遊ぶことを誰かと共有することがあまりありません。また「車を走らせる」という行動は、おもちゃの車を本物の自動車に見立てて走らせるという模倣でもあります。自閉症のこどもでは、この遊びをせず、つまり手に持ったおもちゃの車を現実の自動車に見立てて走らせることはせず、ただおもちゃの車の車輪がくるくる回るのをじっと見つめていることがあります。

 

そのほか、特定の音に敏感に反応して些細な生活音を嫌がる、肌の触覚が極度の敏感で肌触りのよくない服を着なかったり砂場の砂や泥の手触りを嫌がって砂遊びをしない、などの「感覚過敏」も自閉スペクトラム症の症状の特徴として挙げられます。

 

このように、自閉症の子どもは定型発達の子どもとは異なる仕方で世界を経験していますが、それは定型発達が正常で自閉症が異常ということではありません。自己と世界の関係のあり方と世界経験の仕方が両者では端的に異なっているというだけです。

 

診断・治療について

現在の症状とともに、幼少期からの成育歴・発達歴を詳しく問診で確認します。それと並行して心理検査を行うことによって、認知や行動の偏りを客観的に把握する場合もありますが、それで診断がつくということはなく、あくまで診断を補完するものとして用いることが一般的です。

 

自閉症はまだ原因が明らかにされていないため、根本的な治療は確立されていません。しかし、こだわりの強さやかんしゃく、衝動性の高さ、二次的に生じるうつ症状や不安といった個々の症状については薬による治療で緩和されることがあります。

 

支援の基本は、そのこどもの発達に沿った療育のあり方を考え、本人のペースで物事を学んでいけるよう援助していくことが必要になります。一般的には当たり前とされていることもはたして目の前の子どもにとってもそうなのだろうか、と立ち止まって支援をあり方を再考する姿勢が回りの支援者には必要とされるといえます。

 

 

注意欠如/多動症 Attention-deficit/hyperactive disorder(ADHD)

 

症状

ADHDは年齢や発達に不相応な不注意、多動性、衝動性を主な特徴とします。症状が見られるのが大人の場合であっても、子どもの頃からそのような症状があってそれが大人になっても続いているという連続性が存在することが基本です。従って、小学校や中学校のときに失くしものが多く、宿題をするのを忘れる、教科書を持ってくるのを忘れる、順番を守れない、授業中じっと座っていられない、質問が終わる前に出し抜けに手を挙げて答えてしまう、気が散って勉強をやり続けることができないといったことがあり、大人になってからは、職場で注意散漫で仕事でも集中が続かない、計算や事務作業で繰り返しミスをする、仕事に優先順位をつけられない、同時に複数のことをこなせない、といった作業記憶(これは聞いた情報を一時的に脳で憶えておいて、次の作業にその記憶を用いる能力をいいます)や遂行機能・実行機能の問題が続くといったように、幼少期から成人にかけての特性や症状として理解しておくことが肝要です。一方で、大人のケースでは今述べたように子どもの時の症状の有無を確認することが大切ですが、必ずしも子どもの頃に見られた症状が大人になっても続くとは限らず、思春期や成人する頃には幼少期にあった症状が治まってくる場合も多くあり、ADHDの症状は発達の過程で変化し、改善してゆくことがあることを知っておくことも重要です。

 

 

病態

ADHDの原因として遺伝的要因や脳の神経伝達の機能異常が想定されていますが、十分には明らかにされていません。近年、脳が活動している時には働かず反対に脳が休んでいるときに活発に働くデフォルトモード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳内の機能的なつながりが同定され、そのDMNの接続を停止し目的の活動に集中する、という切り替えが困難なため課題に集中できず他の出来事を考えてしまうという注意制御の失調がADHD症状を引き起こすという仮説が提唱されています。そのことを検証する研究がなされていて、子どもの頃からの症状が大人になって治る人と大人になっても続く人ではDMNと特定の脳の領域の接合のパターンが異なることが明らかにされています*。

 

* Sudre G, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2017;114(44):11787-792

 

 

診断

ADHDの診断では、子どもの頃からの症状の有無を把握することが大切になります。診断基準をみると、先程述べたASDではコミュニケーションという関係性や社会性、イマジネーションの問題など外側からは見えにくい内的な要素を評価しているのに対して、ADHDでは「行動」という外的な基準で診断を考えるという点に違いがあります。このような外から捉えた行動の変化は疾患非特異的であるため、同じように多動性や衝動性を示す他の精神疾患や気質・性格との区別、そして合併に留意する必要があります。

 

 

治療

ADHDの治療には薬物療法と非薬物療法とがあります。近年、新しい薬も開発されてきており、使用できる薬の種類も増えているため、症状によってはある程度は薬で改善できることもあります。一方で薬の効果を過信しすぎるのも問題です。ADHDの症状は認知・行動の問題であり、薬の効果でいくらかは症状が治まるとしても、日常の困っていることがすべて薬で取り去られることまでは期待できません。薬以外の治療的関わりとして、その人の行動特徴を把握し、学校であれば現場での教員や周りの生徒の理解を得て、そして本人の自尊感情や自己肯定感を高めるよう関わることや、大人の場合は職場での環境調整や合理的配慮を求めていくといった試みが必要になってきます。

 

トップへ戻る